【獣医師が解説】犬や猫の呼吸が変?|飼い主様が知っておくべきサインと対処法

2025.10.21犬・猫

最近、愛犬や愛猫の「呼吸が早い気がする」「苦しそうに息をしているように見える」そんな様子を見て不安になった経験はありませんか?

呼吸は命に直結する大切な機能であり、異常が見られたらすぐに対応することが大切です。また、呼吸の「正常」と「異常」の違いを知っておくことで、いざという時にも落ち着いて対処することができます。

今回は、犬や猫の正常な呼吸の特徴や異常な呼吸のサイン、考えられる原因、緊急度の判断、受診までにできる対応などについて、解説します。

■目次
1.犬や猫の正常な呼吸とは?
2.異常な呼吸のサインと種類
3.呼吸異常の主な原因
4.緊急度の判断と受診のタイミング
5.受診前にできること・診察時に伝えるべきこと
6.まとめ

犬や猫の正常な呼吸とは?

犬や猫の呼吸が「異常」かどうかを判断するには、まず「正常な状態」を知っておく必要があります。正常な呼吸とは、リズムが一定で、音がほとんどせず、肩やお腹が大きく動かない、落ち着いた状態を指します。また、安静時呼吸数は以下のように、犬や猫によって異なります。

<犬の安静時呼吸数>

1分間におよそ10〜30回程度です。小型犬や子犬ではやや多めになり、大型犬では少なめになる傾向があります。

<猫の安静時呼吸数>

1分間におよそ20〜30回程度が正常範囲とされ、子猫ではこれよりやや多くなることがあります。

呼吸数の測り方としては、犬や猫がリラックスしているときに胸やお腹の上下の動きを1分間数えるだけで簡単に確認できます。難しい場合は、20秒数えて3倍、30秒数えて2倍でも概算が可能です。

なお、運動後や暑い環境にいた場合、または興奮状態にあるときには呼吸が一時的に速くなることがありますが、これは生理的な反応です。しばらく安静にしていれば自然と呼吸は落ち着いてきます。

 

異常な呼吸のサインと種類

呼吸に異常があるときには、以下のようなサインが見られます。

<頻呼吸(ひんこきゅう)>

安静にしているにも関わらず、呼吸数が異常に多い状態です。酸素をうまく取り込めていない可能性があります。

<努力性呼吸>

肩やお腹を大きく動かして呼吸していたり、苦しそうに首を伸ばしたりして息をしている状態。明らかに息をするのがつらそうな様子が見られます。

<開口呼吸(かいこうこきゅう/口呼吸)>

犬では運動後に口を開けてパンティングするのは正常ですが、安静時の口呼吸は危険信号です。
猫の場合、口呼吸自体が重篤な異常を示すサインであるため、すぐに動物病院を受診する必要があります。

<呼吸時の異常音や呼吸の浅さ>

「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった異常音が聞こえる場合や、浅く速い呼吸が続く場合は、気道や肺に何らかのトラブルが起きている可能性があります。

 

呼吸異常の主な原因

呼吸の異常が見られる背景には、以下のような原因が考えられます。

<呼吸器系の問題>

気管虚脱(特に小型犬に多い)や肺炎、気管支炎、猫喘息などを引き起こしている可能性があります。これらの疾患では、咳が出たり、喘鳴音(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴ったり、努力性呼吸が見られることがあります。

<循環器系の問題>

呼吸異常の大きな原因となります。代表的なものとして、僧帽弁閉鎖不全症、肥大型心筋症などがあり、これらの疾患では肺水腫や胸水が生じ、呼吸困難や頻呼吸を引き起こします。

さらにこれら以外にも、熱中症や貧血、強い痛み、精神的ストレスなどが原因で呼吸が速く浅くなる場合もあります。

中でも注意すべきは、肺水腫や呼吸器系の問題といった緊急性の高い病態です。これらは短時間で命に関わるため、早めに動物病院を受診してください。

また、岡山のように夏場に高温多湿となる地域では、特に熱中症や呼吸器感染症に注意が必要です。真夏の日中だけでなく、蒸し暑い朝夕にも呼吸の異常が起きやすいため、季節や気候の特性にも気を配りましょう

 

緊急度の判断と受診のタイミング

以下のようなサインが見られた場合、緊急性が高いため、すぐに動物病院を受診する必要があります。

・舌や歯ぐきが青紫色(チアノーゼ)
・肩やお腹を大きく使って息をしている
・呼吸が速く、安静にしても落ち着かない
・猫が口を開けて呼吸している
・鼻から泡や血が出ている
・横になれず、座ったまま苦しそうにしている
・意識がもうろうとし、ぐったりしている

また、咳が少し続いている、軽い努力性呼吸が見られるが安静にすると改善する、といった軽度の症状であれば、翌日の受診でも間に合うケースがあります。ただし、呼吸の異常は進行が速く、重症化すると命に関わるため、初期のうちから慎重に様子を見ることが大切です。

特に子犬や子猫、高齢の犬や猫、心臓や呼吸器に持病がある場合では、症状が急激に悪化する傾向があるため、わずかな変化にも敏感に反応してください。

 

受診前にできること・診察時に伝えるべきこと

呼吸の異常に気づいたとき、動物病院へ向かう前に飼い主様ができる対応としては、まず犬や猫を安静にさせることです。涼しく静かな環境に移動させ、無理に動かしたり興奮させたりしないようにしてください。なお、呼吸が苦しそうな時に水を無理に飲ませようとするのも避けましょう。

診察を受ける際には、以下の情報を記録しておくと診断に役立ちます。

・呼吸数(できれば安静時に計測)
・いつからどのような症状が出ているか
・他に気になる症状(咳、嘔吐、食欲不振、元気がないなど)
・呼吸異常が始まった時の状況(暑さ、運動後、ストレス要因など)

また、可能であれば、呼吸の様子をスマートフォンなどで動画に記録しておくと、より的確な診断につながります。

当院では、胸部レントゲン検査や超音波検査、血液検査に加え、ICU設備も完備しており、急変時にも迅速な対応が可能です。

当院の施設・設備についてはこちらから

なお、受診するまでの間は、無理に運動させたり自己判断で薬を与えたりすることは絶対に避けてください。これらの行為がかえって症状を悪化させる恐れがあります。

 

まとめ

犬や猫の呼吸の変化は、体が発している重大なサインです。わずかな異変であっても、それが大きな病気の前触れであることも少なくありません。そのため、飼い主様の早い気づきと正しい対応が、命を守るカギになります。

愛猫の「呼吸数が異常に多い」「呼吸が苦しそう」など気になる症状が見られたら、早めに当院までご相談ください。私たちが全力で大切なご家族をサポートいたします。

 

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岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
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この記事を書いた人
永原 未悠(ながはら みゆ)
  • 永原動物病院 院長
  • 永原 未悠(ながはら みゆ)

飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。

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