コラム
COLUMN
足が動かない、歩き方がおかしい…犬や猫の足の異変から考えられる病気とは?
2026.01.20犬・猫
「急に片足を浮かせて歩くようになった」「ふらついて転びそうになる」愛犬・愛猫の足に異変があるとき、多くの飼い主様が不安と戸惑いでいっぱいになります。
中には、少し休ませているうちに落ち着いてくることもありますが、実はその裏に、骨や関節の病気、神経のトラブル、命に関わる内科疾患が隠れていることもあります。特に「突然立てなくなった」「後ろ足が急に動かない」といった症状は、一刻を争う緊急事態である可能性もあります。
今回は、犬や猫の「足の異変」から考えられる主な病気や、受診の目安、日常で気をつけたいポイントについて詳しく解説します。

■目次
1.犬や猫が見せる「足の異変」主な症状とは?
2.受診の目安
3.考えられる原因①|骨・関節など整形外科系の異常
4.考えられる原因②|神経・脊椎疾患
5.考えられる原因③|内科疾患・緊急性の高い病気
6.検査方法
7.治療方法
8.日常で気をつけたいケアと予防
9.まとめ
犬や猫が見せる「足の異変」主な症状とは?
足や歩き方の異常といっても、その出方はさまざまです。よく見られるサインとして、次のようなものがあります。
・片方の足を地面につけず、浮かせたまま三本足で歩く
・足を引きずるように歩く、片足をかばうように歩く
・後ろ足がふらつき、うまく踏ん張れない
・お散歩に行きたがらなくなった
・寝ている時間が増え、動きが全体的にゆっくりになってきた
・動き始めにぎこちなさが目立つようになった
・ソファやベッドへのジャンプ、階段の上り下りをためらうようになった
こうした様子が続くときには、「少し様子を見よう」と先延ばしにせず、一度動物病院で相談していただくと安心です。
受診の目安
できるだけ早めの受診をおすすめしたいケースは、次のような場合です。
・軽いびっこやふらつきが数日続いている
・階段やソファの上り下りを明らかにためらう
・足や関節を触ると嫌がる、怒る
・動き始めだけぎこちなさが続いている
一方で、次のような場合は「救急レベル」の可能性が高く、時間帯によっては夜間救急も含めて、できるだけ早く受診する必要があります。
・足をまったくつけられない、立ち上がれない
・後ろ足が突然動かなくなった
・足先が冷たくなっている、強く鳴き叫ぶ
・明らかに強い痛みがあり、落ち着いていられない
「今日はたまたまかも」「少し様子を見よう」と迷っているうちに、取り返しのつかない状態に進行してしまう病気もあります。少しでも不安があれば、早めにご相談いただくことが、愛犬・愛猫の足と全身の健康を守るうえでとても大切です。
考えられる原因①|骨・関節など整形外科系の異常
足の異常でまず考えられるのが、骨や関節・靭帯といった「整形外科」のトラブルです。
・骨折・脱臼
高いところからの落下や、ドアに挟まれた、車や自転車との接触など、急な外傷で起こります。見た目にはわずかな腫れや違和感だけの場合もありますが、放置すると骨が変な形でくっついてしまうこともあるため、早期にレントゲン検査で確認することが大切です。
・靭帯損傷(前十字靭帯断裂など)
膝の中にある「前十字靭帯」が切れてしまう病気です。そのままにしておくと膝の関節が不安定になり、関節炎がひどくなっていくため、多くの場合で外科手術が検討されます。
・関節炎・変形性関節症
加齢や長年の負担によって関節の軟骨がすり減り、炎症を起こす病気です。秋〜冬にかけては、冷えによって関節の動きが悪くなり、痛みが強まることも少なくありません。暖かい季節はあまり気にならなかったのに、寒くなってから足の不調が目立ってきた、という場合も、関節のトラブルが隠れている可能性があります。
・膝蓋骨脱臼(パテラ)
小型犬で非常に多いのが、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置からずれてしまう「膝蓋骨脱臼」です。先天的な体のつくりに加え、滑りやすい床やジャンプの多い生活環境も影響すると考えられています。重症度によっては、生活環境の見直しや体重管理、手術などを組み合わせて治療していきます。
考えられる原因②|神経・脊椎疾患
足の異常の中には、「痛そうに見えないのに、うまく動かせない」という、神経や脊椎のトラブルが関係しているものもあります。
・椎間板ヘルニア
特にダックスフンドなど、胴の長い犬種でよく見られる病気です。背骨と背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺を起こします。
初期には「抱き上げると痛がる」「背中を丸めて歩く」「後ろ足がふらつく」といったサインが現れます。
適切なタイミングで診断・治療を開始できるかどうかが、その後の回復に大きく影響します。
・脊椎の奇形・変形
フレンチブルドッグやパグなどの短頭種では、生まれつき背骨の形が変わっていることもあり、その部位で神経の圧迫が起こると、後ろ足のふらつきや麻痺が見られることがあります。
また、高齢の犬猫では背骨の変形や骨のトゲが神経を刺激し、じわじわと歩き方の異常が進んでいくケースもあります。
・末梢神経障害
糖尿病や免疫の異常など、全身の病気が原因で、手足の末梢神経にダメージが生じることもあります。足先の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなったりすることで、つま先を引きずるような歩き方になることがあります。特に猫では、糖尿病に伴う後ろ足の麻痺(かかとを床につけて歩くような格好)などが見られることもあります。
このように、神経や脊椎の病気では「強い痛みを訴えないのに足を引きずる・ふらつく」といったケースも多く見られます。痛みがなさそうだからといって安心せず、早めにご相談ください。
考えられる原因③|内科疾患・緊急性の高い病気
足の異常は、骨や関節、神経だけの問題とは限りません。中には、命に関わる内科疾患のサインとして現れるものもあります。
・血栓症(大動脈血栓塞栓症)
特に注意が必要なのが、猫に多い「大動脈血栓塞栓症」です。心臓病などを背景に心臓内で血栓(血の塊)ができ、それが血流に乗って後ろ足の動脈につまってしまう病気です。
「朝は普通だったのに急に後ろ足がおかしくなった」ような場合には、すぐに動物病院を受診する必要があります。
・感染症・炎症性疾患
ウイルスや細菌感染、免疫の異常などによって関節に炎症が起こる「関節炎」や、筋肉や皮下に膿瘍ができて強い痛みを起こすケースもあります。外傷がなくても、関節の腫れや発熱、元気・食欲の低下を伴うときには、内科的な治療が必要になることがあります。
・全身状態の悪化によるふらつき
重度の貧血や低血糖、電解質異常、心臓病や腎臓病などでも、力が入らずふらつく、足がもつれる、といった症状が出ることがあります。一見足だけの問題のように見えても、全身の検査が必要なケースも少なくありません。
検査方法
まず問診と身体検査からスタートします。歩き方の観察、関節や筋肉・背骨を触ってのチェック、神経学的な反射の確認などを行い、おおまかな原因の絞り込みをしていきます。
必要に応じて、レントゲン検査で骨や関節、脊椎の状態を確認します。関節の変形や骨折の有無など、目に見えない部分の情報を得ることができます。
エコー検査では、心臓やおなかの臓器、血流の状態などを評価し、血栓症や内臓疾患の可能性を探ります。
血液検査では、炎症や貧血、内臓の機能など、全身状態を把握します。
治療方法
治療は原因や症状の重さによってさまざまです。骨折や靭帯断裂などでは、痛みを和らげる鎮痛処置や固定処置に加え、外科手術が必要になることもあります。
椎間板ヘルニアでも、軽度の場合は内科的な治療で管理し、重度の場合には手術を検討します。
慢性的な関節疾患では、消炎鎮痛剤の内服に加えて、体重管理やリハビリ、関節をサポートするサプリメント、関節ケアに配慮した処方食などを組み合わせて、長期的なケアを行います。当院では処方食にも力を入れており、関節や体重管理に適したフードのご提案も行っています。
重症例や、より高度な検査・治療が必要と判断した場合には、大学病院や専門機関と連携しながら治療方針を検討します。すでに他院で診断や治療を受けてこられた場合のセカンドオピニオンにも対応しており、これまでの検査結果や治療経過を一緒に振り返りながら、できるだけご不安を解消できるよう丁寧にご説明いたします。
日常で気をつけたいケアと予防
すべての足のトラブルを完全に防ぐことはできませんが、毎日の生活の中で少し意識していただくだけでも、ケガや関節トラブルのリスクを減らしたり、悪化を防いだりすることができます。
ここでは、特に意識してほしいポイントを5つご紹介します。
① 滑りやすい床の対策
滑りやすいフローリングは、関節や靭帯に負担をかける大きな原因です。リビングやよく歩く場所だけでも、滑り止めマットを敷く、カーペットを敷くなどの対策をおすすめします。
② 体重管理で足腰の負担を減らす
体重が増えれば増えるほど、足腰への負担は大きくなります。関節に配慮したフードや、適切なカロリー設計の食事を選び、無理のない範囲で運動量とのバランスをとることが大切です。
③ 無理のない運動と「遊び方」の工夫
運動は「たくさんやれば良い」というものではありません。年齢や体力、関節の状態に合わせて、無理のない範囲で継続することがポイントです。急なダッシュやジャンプの多い遊び、長時間の激しい運動は、関節や靭帯への負担が大きくなることがありますので注意しましょう。
段差の多い生活環境では、スロープを設置する、抱っこで上り下りするなどの工夫も役立ちます。
④ シニア期は「早めのチェック」を
シニア期に入った犬や猫では、年に2度の健康診断に加え、関節や筋肉の状態を診てもらうのもおすすめです。少し早めに関節のトラブルを見つけておくことで、痛みが強くなる前からケアを始めることができ、その後の生活の質を保ちやすくなります。
⑤ 秋〜冬に気をつけたい「冷え」と環境
秋〜冬は関節トラブルが悪化しやすい季節です。寝床を冷たい床から離す、ふんわりとしたベッドを用意する、エアコンやヒーターで極端な冷えを避けるなど、寒さ対策も意識してあげてください。
まとめ
犬や猫の足の異変は、「ちょっとしたケガ」から、「手術が必要な病気」さらには「命に関わる内科疾患」まで、非常に幅広い原因が隠れています。見た目の変化がわずかでも、動物自身は強い痛みや不安を抱えていることがあります。
「年齢のせいかな」「そのうち良くなるかも」と様子を見ている間に、病気が進行してしまうことも少なくありません。一方で、早めに原因を突き止めて治療やケアを始めることで、痛みを和らげたり、元気に歩ける時間を長く保てたりするケースもたくさんあります。
「歩き方がおかしい気がする」「最近、動きが前より鈍くなった」そんな小さな違和感でも構いません。愛犬・愛猫の足や歩き方で気になることがありましたら、どうぞお早めにご相談ください。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。