コラム
COLUMN
犬や猫の発作について|突然のけいれんや意識喪失にどう対応する?
2026.04.20犬・猫
「急に愛犬が倒れてけいれんし始めた」「呼びかけても反応がない」
そんな光景を目の当たりにしたら、驚きと不安で頭が真っ白になってしまう方がほとんどだと思います。
発作は、犬や猫の体に起こる深刻な異常のサインです。ときには命に関わることもあるため、飼い主様がどれだけ冷静に行動し、適切なタイミングで受診できるかが、その後の健康状態を大きく左右します。
今回は、犬や猫に起こる発作の種類や原因、発作時の対応、動物病院で行える検査や治療、そして日常生活での予防のポイントまで詳しく解説します。

■目次
1.発作とは?けいれんだけじゃない“気づきにくいサイン”も
2.犬や猫の発作の主な原因
3.発作が起きたらどうする?飼い主様の初期対応
4.すぐ受診が必要な発作のサインとは?
5.永原動物病院でできる検査と治療の流れ
6.発作の予防と再発防止のためにできること
7.まとめ
発作とは?けいれんだけじゃない“気づきにくいサイン”も
発作とは、脳の中で電気的な興奮が異常に起こることで、突然あらわれるさまざまな神経のトラブルを指します。
「体を震わせて倒れる」「けいれんする」といったわかりやすい症状を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はもっとさりげなく見える発作もあります。
たとえば、次のような様子です。
・急に一点を見つめたまま動かなくなる
・同じ方向にぐるぐると回り続ける
・ふと意識がぼんやりしているように見える
・突然立ち上がって歩き回る
・口をくちゃくちゃと動かす、よだれがたくさん出る
こうした行動の裏には、「部分発作」と呼ばれる、脳の一部だけが異常に興奮している状態が隠れていることがあります。
一見すると「寝ぼけているのかな?」「ちょっと変なクセかな?」と見過ごしてしまいやすいため、普段の様子をよく知る飼い主様の“気づき”が、早期発見の大きなカギになります。
犬や猫の発作の主な原因
発作は「症状の名前」であり、その背景にはさまざまな病気や身体の異常が潜んでいます。主な原因は、以下のようなものがあります。
<脳の異常によるもの>
・てんかん(特発性てんかん)
原因ははっきり分かっていませんが、脳の興奮をうまくコントロールできなくなる病気です。特に若い犬に多く見られます。
・脳腫瘍や頭部外傷
高齢の犬や猫では、脳腫瘍が原因となって発作が起こることがあります。転倒や事故による頭部外傷がきっかけになることもあります。
<体内のバランス異常(代謝性疾患)>
・低血糖
血糖値が極端に下がると、脳がうまく働かなくなり発作を起こすことがあります。
・肝性脳症
肝臓の働きが低下することで、血液中に有害物質がたまり、脳に影響を与える状態です。
・電解質異常(ナトリウム・カルシウムの不足など)
体内のミネラルバランスが崩れると、神経の働きに支障が出ることがあります。
<感染症や炎症性の病気>
ウイルスや細菌、真菌などが脳に感染することで、脳炎を引き起こし、発作の原因になることがあります。
<中毒>
チョコレート、キシリトール、タバコ、殺虫剤などを誤って食べてしまうと、急激な中毒症状として発作を起こす場合があります。
<その他>
その他にも、原因がはっきりと特定できない「突発的な発作」が見られるケースがあります。また、心臓病や熱中症、強いストレスといった、神経以外の要因が引き金となって発作が起きることもあります。
発作が起きたらどうする?飼い主様の初期対応
突然の発作に直面すると、多くの飼い主様が驚き、どうすればいいのかわからずパニックになってしまいます。しかし、慌ててしまい誤った対応をしてしまうと、かえって愛犬・愛猫の体に負担をかけてしまう恐れがあります。
以下のポイントを押さえて、できるだけ落ち着いて対応しましょう。
・発作中は静かに見守る
・周りの家具や物を片付け、安全なスペースを確保する
・可能であればスマートフォンで発作の様子を動画撮影する
・発作が始まった“時間”を記録する
動画や発作時間の記録は、動物病院での診察時にとても役立ちます。
<やってはいけないこと>
・体を揺さぶる
・大声で呼びかける
・口をこじ開ける
特に「舌を噛んでしまうのでは?」という心配から口に手を入れてしまう方がいますが、愛犬・愛猫が無意識に強く噛んでしまい、飼い主様がケガをする危険性があります。絶対に口の中に手を入れないでください。
すぐ受診が必要な発作のサインとは?
発作が起きた際、すべてが緊急とは限りませんが、以下のような症状が見られる場合には、命に関わる可能性もあるため、すぐに動物病院へ連絡し、受診してください。
・発作が5分以上続いて止まらない
・発作が短時間に何度も繰り返される(群発発作)
・発作後も意識が戻らない、あるいは意識がもうろうとしている
・呼吸が苦しそう、あるいは舌や歯ぐきが紫色(チアノーゼ)になっている
また、発作が初めて起きた場合や、発作後にふらつき・混乱・失禁などの異常な行動が続くとき、高齢で持病がある犬や猫の場合も、当日中の受診をおすすめします。
なお、すでにてんかんと診断され、獣医師の指導のもとで治療・管理を行っている子が、短時間の軽い発作を一度だけ起こした場合には、経過観察でよいケースもあります。しかしその場合でも、必ず病院に報告し、発作の様子や頻度を共有することが大切です。治療内容の調整や今後の管理の判断に役立ちます。
永原動物病院でできる検査と治療の流れ
当院では、発作の原因をできる限り突き止めるために、以下のような多角的な検査を組み合わせて診断を行います。
・身体検査・神経学的検査:意識の状態や反射反応を確認し、脳や神経の異常を評価します。
・血液検査:肝臓や腎臓の機能、血糖値、電解質バランスなど、全身状態を把握します。
血液検査でわかることについてより詳しく知りたい方はこちら
・画像検査(レントゲン・超音波):腫瘍や臓器の異常がないかを確認します。
・高度検査(CT・MRI):必要に応じて高度医療機関と連携し、脳疾患の精密検査も行います。
これらの結果を総合して、てんかんと診断された場合には、抗てんかん薬による継続的な治療を開始します。薬の種類や量はその子ごとに適したものが異なるため、血中濃度を定期的に測定しながら慎重にコントロールしていきます。
原因が中毒や肝疾患、代謝異常などの場合には、根本的な疾患への治療に加え、食事療法や生活環境の見直しをあわせて行います。
なお、当院では犬と猫で受付・診察室・入院室を完全に分離しており、発作後の不安定な状態でも、できるだけストレスを少なくした環境で診療を受けていただけます。飼い主様にも安心してご来院いただけるよう、十分な説明とサポート体制を整えています。
発作の予防と再発防止のためにできること
発作を100%防ぐことは難しいものの、毎日のちょっとした工夫やケアでリスクを減らすことは可能です。
・定期的な健康チェック
まず一番大切なのは、年に1〜2回の健康診断を受けることです。
特にシニア期の犬や猫は、見た目に異常がなくても、血液検査などで肝臓・腎臓・代謝の異常が早期に見つかることがあります。
こうした異常を「症状が出る前」に見つけておくことが、発作の予防にもつながります。
・寄生虫・感染症対策
フィラリアやノミ・マダニなどの寄生虫対策や、感染症のワクチン接種も忘れずに行いましょう。これらは、脳炎など神経系に影響する疾患の予防に役立ちます。
・誤食を防ぐ
発作の原因のひとつに「中毒」があります。
チョコレートやキシリトール、タバコ、薬、洗剤などの危険なものは、必ずペットの手の届かない場所に保管してください。ほんの少量でも命に関わることがあります。
・ストレスの少ない環境づくり
過度な騒音、長時間の留守番、急な生活リズムの変化などは、動物にとって大きなストレスとなり、発作のきっかけになることがあります。
安心できる静かな環境と、なるべく安定した生活リズムを保つことが大切です。
まとめ
犬や猫の発作は、突然の出来事で飼い主様に大きな不安を与えるものですが、正しい初期対応と継続的な管理によって、発作のコントロールや再発の予防は十分に可能です。
「すぐ治まったから様子を見よう」「一度きりだから大丈夫」と思っていても、その背景には見逃してはいけない病気が隠れていることもあります。小さな異変でも、まずは一度ご相談ください。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。