コラム
COLUMN
シニア期の犬と猫の行動変化に注意|認知症の症状と向き合い方
2026.07.22犬・猫
「最近、夜になると愛犬がよく鳴くようになった」
「愛猫が同じ場所をぐるぐる歩いている」
「名前を呼んでも反応が鈍くなった気がする」
犬や猫がシニア期を迎えると、このような行動の変化に気づく飼い主様もいらっしゃいます。
年齢を重ねると体だけでなく脳にも変化が起こります。そのため、これまでと違う様子がみられる場合があります。
こうした変化の背景には、「認知機能不全症候群」と呼ばれる病気が隠れている可能性があります。いわゆる認知症や「ボケ」と呼ばれる状態です。
認知症は完治が難しい病気ですが、早い段階で気づき、適切なケアや治療を始めることで、進行を緩やかにしながら生活の質(QOL)の維持を目指せます。
大切なのは、「高齢だから仕方ない」と決めつけないことです。小さな変化に気づき、早めに相談することで、愛犬や愛猫が穏やかに過ごせる時間を支えられる場合があります。
そこで今回は、犬や猫の認知機能不全症候群について、症状や原因、ご自宅でできるケア、動物病院に相談する目安と当院の考え方などについてご紹介します。

■目次
1.犬や猫の認知症(認知機能不全症候群)とは?
2.見逃しやすい初期症状|犬・猫の認知症サイン
3.認知症が進行したときにみられる変化
4.認知症の原因と特徴
5.ご自宅でできるケアと日常生活の工夫
6.動物病院に相談する目安と当院の考え方
7.まとめ
犬や猫の認知症(認知機能不全症候群)とは?
認知症とは、加齢によって脳の働きが低下し、行動や認識に変化が表れる病気です。
人の認知症と似た病気であり、獣医療では「認知機能不全症候群(Cognitive Dysfunction Syndrome:CDS)」と呼ばれています。
また、近年はフードの品質向上や予防医療の普及、獣医療の発展によって犬や猫の寿命が延びています。それに伴い、高齢期特有の病気を抱える犬や猫も増えてきました。
認知症もそのひとつです。
認知症は特定の犬種や猫種だけが発症する病気ではありません。どの犬種や猫種にも起こる可能性があり、シニア期を迎えた犬や猫では身近な病気のひとつといえます。
特に近年は高齢の犬や猫が増えているため、認知症について正しく理解しておくことが大切です。
見逃しやすい初期症状|犬・猫の認知症サイン
認知症の初期症状はゆっくり進行するため、飼い主様が気づきにくい傾向があります。
また、「年齢による変化かな」と思われやすいため、受診が遅れてしまうケースも少なくありません。
初期には以下のような変化がみられます。
・夜間によく鳴くようになる
・昼夜逆転して夜に活動する
・同じ場所を歩き続ける
・名前を呼んでも反応が鈍い
・飼い主様とのコミュニケーションが減る
・トイレの失敗が増える
・今までできていたことができなくなる
例えば、これまで朝は静かに寝ていた犬や猫が、夜中に何度も鳴くようになる場合があります。
また、部屋の中を目的なく歩き回ったり、壁際を行ったり来たりしたりする様子がみられることもあります。
こうした変化は一見すると老化現象のようにみえますが、認知症の初期サインである可能性も考えられます。
そのため、違和感を覚えた段階で相談すると、今後のケアや治療方針を早めに検討しやすくなります。
認知症が進行したときにみられる変化
認知症が進行すると、日常生活への影響が大きくなる場合があります。
例えば、以下のような症状がみられることがあります。
・家族の認識が難しくなる
・不安行動が増える
・壁や家具の隙間に入り込み出られなくなる
・食事や睡眠のリズムが乱れる
・昼夜を問わず徘徊する
・自力での生活が難しくなる
症状が進行すると、不安や混乱が強くなり、飼い主様の後をずっと追いかけたり、落ち着きなく歩き続けたりする場合があります。
また、食事の時間がわからなくなったり、夜間にほとんど眠らなくなったりすることもあります。
症状の進行速度には個体差があり、数年かけてゆっくり進行する場合もあれば、比較的短期間で変化が目立つケースもあります。
そのため、症状の程度に応じて生活環境やケア方法を見直していくことが重要です。
認知症の原因と特徴
認知症の主な原因は加齢による脳の変化です。
年齢を重ねることで脳神経細胞の機能が低下し、記憶や判断力、学習能力などに影響が生じると考えられています。
残念ながら、現在の獣医療では認知症を完全に防ぐ方法や完治させる治療法は確立されていません。
そのため、治療の目的は症状の改善だけでなく、進行をできる限り緩やかにしながらQOLを維持することになります。
また、生活環境の変化や刺激の少ない生活、持病などが影響している可能性も指摘されています。
なお、認知症と診断されたからといって、すぐに生活が大きく変わるわけではありません。病気の特徴を理解し、その子に合ったサポートを続けることが大切です。
ご自宅でできるケアと日常生活の工夫
認知症と向き合ううえでは、以下のようにご自宅でのケアや工夫が重要です。
<生活リズムを整える>
昼間は無理のない範囲で散歩をしたり、遊びの時間を設けたりして活動量を確保します。適度な刺激を与えることで、夜間の落ち着きにつながる場合があります。
<住環境の見直し>
また、徘徊がみられる場合には住環境の見直しも必要です。
家具の配置を頻繁に変えないようにしたり、段差による転倒を防いだりすることで、安全に過ごしやすくなります。
<脳への刺激を与える>
優しく声をかけたり、簡単なおもちゃ遊びを取り入れたりして脳への刺激を与えることも大切です。
<食事管理を行う>
シニア期になると筋肉量や消化機能が変化するため、年齢や健康状態に合わせた食事選びが求められます。
また、介護は長期間続く場合もあります。飼い主様だけで抱え込まず、無理のない範囲で続けられる方法を考えることが大切です。
動物病院に相談する目安と当院の考え方
以下のような変化がみられた場合は、一度動物病院へ相談することをおすすめします。
・急激な行動変化がみられる
・夜鳴きや徘徊が急に始まった
・トイレや食事に支障が出ている
・発作やふらつきを伴う
・飼い主様の介護負担が大きくなっている
また、認知症と思われる症状の中には、脳腫瘍や脳炎などの神経疾患、甲状腺疾患、高血圧、腎臓病などが隠れている場合もあります。
猫の甲状腺機能亢進症についてより詳しく知りたい方はこちら
犬と猫の腎臓病についてより詳しく知りたい方はこちら
そのため、「高齢だから仕方ない」と判断せず、原因を確認することが重要です。
当院では、飼い主様との対話を大切にしながら診察を行っています。
認知症の診断では、ご自宅での様子が大切な手がかりになります。気になる行動があれば動画を撮影したり、症状の経過を記録したりしていただくと診察に役立ちます。
また、今後の生活や介護について不安を抱えている飼い主様とも丁寧にお話ししながら、その子に合ったサポート方法を一緒に考えていきます。
セカンドオピニオンにも対応しておりますので、現在の診断や治療について相談したい場合もお気軽にご相談ください。
まとめ
犬や猫の認知症は、高齢化に伴って増えている身近な病気です。
夜鳴きや徘徊、トイレの失敗などは年齢による変化と思われがちですが、その背景に認知機能不全症候群が隠れている場合があります。
認知症は完治が難しい病気ですが、早期発見と適切なケアによって進行を緩やかにし、生活の質を維持できる可能性があります。
大切なのは、「年のせい」と決めつけず、小さな変化を見逃さないことです。
なお、当院では認知症が疑われる犬や猫の診察はもちろん、シニア期の健康管理や介護に関するご相談にも対応しております。気になる行動の変化がみられた際は、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。