コラム
COLUMN
犬が後ろ足を浮かせる・スキップする|パテラ(膝蓋骨脱臼)の症状と対処法
2026.07.30犬
「散歩中に急に後ろ足を上げた」「スキップするような歩き方をする」といった愛犬の様子を見て、不安になった経験はありませんか。
このような歩き方が見られる場合「パテラ(膝蓋骨脱臼)」が関係している可能性があります。パテラは小型犬に多く見られる整形外科疾患ですが「パテラと診断されたら手術が必要になる」と思われる飼い主様も少なくありません。
しかし、実際にはすべての犬が手術の対象になるわけではなく、症状や膝の状態によって管理方法は異なります。軽度であれば、生活環境の見直しや体重管理などによって、症状の進行を抑えながら過ごせる場合もあります。
一方で「たまに足を上げるだけだから大丈夫」と様子を見続けると、膝への負担が少しずつ積み重なり、症状が悪化する可能性もあります。そのため、現在の状態を正しく把握し、その子に合った管理を行うことが大切です。
今回は、犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の原因や症状、グレードごとの違い、日常生活で気を付けたいポイントについて解説します。

■目次
1.犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とはどんな病気?
2.こんな症状は要注意|犬のパテラで見られやすいサイン
3.パテラのグレードとは?状態によって対応が変わります
4.犬のパテラは手術だけじゃない|グレードに応じた管理方法
5.おうちでできるパテラ対策|膝に負担をかけにくい生活環境づくり
6.まとめ
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とはどんな病気?
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは、膝のお皿にあたる膝蓋骨(しつがいこつ)が正常な位置から外れてしまう病気です。
本来、膝蓋骨は膝の曲げ伸ばしをスムーズに行うために重要な役割を担っています。しかし、この骨がずれると膝の動きが不安定になり、歩き方に違和感が表れたり、膝へ負担がかかったりします。
特に、チワワやトイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどの小型犬に多く見られます。
原因は、生まれつきの骨格の特徴だけではありません。滑りやすい床で生活していたり、高い場所から飛び降りる機会が多かったり、体重が増えたりすることで、膝への負担が大きくなり、症状が進行する場合もあります。
また、初期には「たまに後ろ足を浮かせる」「数歩スキップすると元に戻る」といった軽い症状しか見られないことも少なくありません。そのため、異変に気付きながらも「クセなのかな」と受診を先延ばしにしてしまうケースもあります。
歩き方に違和感が繰り返し見られる場合は、症状が軽いうちに動物病院で相談することが大切です。
こんな症状は要注意|犬のパテラで見られやすいサイン
犬のパテラでは、症状の表れ方に個体差があります。初期には膝のお皿が一時的に外れても自然に元へ戻ることがあり、普段どおりに過ごしている時間も多いため、異変に気付きにくい場合があります。
しかし、歩き方や普段の行動をよく観察すると、小さなサインが見られることがあります。
以下のような様子が続く場合は、動物病院で相談しましょう。
・歩いている途中で急に後ろ足を上げる
・スキップするような歩き方をする
・数歩歩くと普通に歩き始める
・抱っこを嫌がる
・階段の上り下りをためらう
・ソファやベッドへ飛び乗らなくなる
・散歩の途中で立ち止まる、歩きたがらない
・後ろ足を触られるのを嫌がる
このような症状は毎日続くとは限りません。そのため「今日は普通に歩いているから大丈夫」と考えてしまうこともあります。
しかし、膝のお皿が繰り返し外れたり戻ったりすると、関節には少しずつ負担が蓄積します。その状態が続くと、将来的に歩きづらさや痛みにつながる可能性があります。
「年齢のせい」「この子の歩き方のクセ」と自己判断せず、違和感が続く場合は早めに診察を受けることが大切です。
パテラのグレードとは?状態によって対応が変わります
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、膝のお皿の外れやすさによってグレード1〜4に分類されます。
一般的には、以下のような状態が目安です。
◆グレード1
膝のお皿は普段は正常な位置にありますが、押すと外れ、自然に元の位置へ戻ります。
◆グレード2
自然に外れることがありますが、自然に戻ったり、手で戻したりできます。
◆グレード3
外れた状態が多く、手で戻すことはできますが、再び外れやすい状態です。
◆グレード4
常に外れており、手で元の位置へ戻すことができません。
グレードが高いほど歩行への影響は大きくなる傾向がありますが、治療方針はグレードだけで決まるわけではありません。
例えば、グレード2でも日常生活にほとんど支障がない犬もいれば、比較的軽いグレードでも痛みが強く、生活に影響が出る犬もいます。
そのため、診察では膝の状態だけでなく、歩き方や筋肉の付き方、痛みの程度、生活環境なども含めて総合的に判断します。
インターネットで症状を調べると「うちの子はグレード〇かもしれない」と思われるかもしれません。しかし、正確なグレードは実際に診察しなければ判断できません。
現在の状態を把握し、その子に合った管理方法を選ぶためにも、気になる症状がある場合は一度ご相談ください。
犬のパテラは手術だけじゃない|グレードに応じた管理方法
「パテラと診断されたら、手術をしなければ治らないのでしょうか。」
このような不安を抱える飼い主様は少なくありません。しかし、パテラと診断されても、すべての犬で手術が必要になるわけではありません。
前述したように、治療や管理方法はグレードだけではなく、歩き方や痛みの程度、年齢、生活環境などを総合的に考慮して決定します。
症状が軽く、日常生活への影響が少ない場合には、手術を行わずに経過を観察することもあります。その際は、膝への負担を軽減しながら症状の進行を抑えることを目標に管理を進めます。
例えば、以下のような方法を組み合わせながら管理を行います。
・関節の健康維持を目的としたサプリメントの活用
・適正体重の維持
・滑りやすい床の改善
・運動量や運動内容の見直し
・定期的な診察による経過観察
一方で、脱臼を繰り返して歩き方への影響が大きい場合や、痛みが強く日常生活に支障が出ている場合には、手術を検討したほうがよいケースもあります。
なお、当院では重度のパテラに対する手術は行っておりません。手術が望ましいと判断した場合は、専門病院と連携しながら治療を進められるようサポートしています。
「手術をする・しない」を一方的に決めるのではなく、現在の状態や今後予想される経過について丁寧にご説明し、飼い主様と一緒に、その子に合った治療や日常生活でのケアを考えることを大切にしています。
おうちでできるパテラ対策|膝に負担をかけにくい生活環境づくり
毎日の生活の中で、以下のような工夫を取り入れることで、膝への負担を軽減し、症状の進行を抑えられる可能性があります。
<フローリングにはマットやカーペットを敷く>
フローリングは犬の足が滑りやすく、踏ん張るたびに膝へ負担がかかります。
愛犬がよく歩く場所にはマットやカーペットを敷き、滑りにくい環境を整えてあげましょう。
<適正体重を維持する>
体重が増えると、その分だけ膝への負担も大きくなります。
適正体重を維持するためには、食事量やおやつの与え方を見直すことも大切です。体型に合わせたフード選びや食事管理について不安がある場合は、動物病院へ相談しましょう。
<激しい運動やジャンプを控える>
膝への負担を減らすためには、関節に強い衝撃がかかる動きをできるだけ避けることが大切です。急な方向転換を伴う運動や、高い場所からの飛び降りは、症状の悪化につながる場合があります。
一方で、運動を全くしないほうがよいわけではありません。愛犬の状態に合わせて、無理のない散歩や遊びを続けることを心がけましょう。
<サプリメントは補助的に活用する>
関節の健康維持を目的として、サプリメントを取り入れる場合もあります。
ただし、サプリメントだけでパテラが改善するわけではありません。生活環境の改善や体重管理と組み合わせながら活用することが大切です。
愛犬の年齢や症状に適したものを選ぶためにも、使用する前に獣医師へ相談すると安心です。
まとめ
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、小型犬に多く見られる病気ですが「パテラ=手術が必要」というわけではありません。
症状やグレードによって管理方法は異なり、軽度であれば生活環境の見直しや体重管理、サプリメントなどで経過を観察する場合があります。一方で、歩行への影響が大きい場合や症状が進行している場合には、専門病院での治療が必要になることもあります。
大切なのは「手術をする・しない」を自己判断するのではなく、まず現在の膝の状態を正しく把握することです。後ろ足を浮かせたり、スキップするような歩き方が見られたりする場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。
なお、当院では飼い主様とのインフォームドコンセントを大切にしながら、それぞれの状態に合わせた管理方法をご提案しています。セカンドオピニオンにも対応しておりますので、気になる症状や治療方針に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。