犬と猫の子宮蓄膿症について|避妊手術で発症防止

2024.03.08犬・猫

子宮蓄膿症とは、陰部から細菌が子宮内に入り込み、そこで増殖することにより子宮内に膿が溜まる病気です。この病気は発情開始から2か月以内の黄体期と呼ばれる期間に発症します。9歳以上の避妊していないメス犬においては、発症率が66%という報告もあり、非常に多く見られる疾患です。
一方で猫の場合、発症率は低いですが、避妊していない場合であれば発症のリスクがあります。

今回は、犬や猫の子宮蓄膿症の原因や症状、注意点などについて詳しく解説していきます。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や注意点
6.まとめ

原因

子宮は、黄体期に優位になる性ホルモン(プロゲステロン)の作用で、内膜が厚くなり、また子宮内の免疫が低下することから、細菌が増殖しやすい環境になります。そのため、肛門や陰部周辺にいる大腸菌などが子宮内に入り込み、感染を引き起こすことで、この疾患を発症します。原因となる菌には、サルモネラ菌ブドウ球菌なども含まれます。

症状

子宮蓄膿症には、次のような症状が挙げられます。

元気消失
食欲低下や食欲喪失
陰部から血膿のようなものが出る
多飲多尿
発熱
虚脱  など

陰部からおりものや膿が出ている開放型の状態は気がつきやすいですが、閉鎖型といって子宮から膿を排出できない病態の場合、病気の発見が難しくなります。
また、開放型の場合でも、犬や猫が排出された膿をなめ取ってしまうことで、病気の兆候が見えにくくなることがあります。もし、犬や猫が陰部を頻繁に舐めている場合は注意が必要です。

診断方法

エコー検査で子宮内に溜まっている膿を確認することで診断されることが一般的です。
また、全身の健康状態を把握するために、血液検査レントゲン検査も併せて行われます。血液検査では、白血球数や炎症性マーカーの上昇が見られます。

治療方法

子宮蓄膿症の治療は、内科治療外科治療の2つがあります。
抗生物質を使用する内科的治療が選択される場合もありますが、一時的に状態が改善しても再発することが多く、根本的な解決には至りません。

外科治療では、膿が溜まっている子宮と卵巣を除去します。
子宮を摘出するため、再発の可能性はなく根本的な完治が期待できます。しかし、早期に手術を実施しても、その後の死亡率は5~8%とされています。病気の発見が遅れると手術を行ったとしても救命率が低下するため、早期発見と早期治療が非常に重要です。

予防法や注意点

子宮蓄膿症を確実に予防する方法は、避妊手術を行うことです。
健康で若い体にメスを入れることにためらいを感じる飼い主様も多いですが、病気になってから手術するよりもリスクが低く、体にかかる負担も少ないです。
さらに、早期の避妊手術は、子宮蓄膿症だけでなく乳腺腫瘍の発症率を下げることもできます。

まとめ

子宮蓄膿症は、子宮内の細菌由来の毒素が全身を巡り敗血症を引き起こしたり、膿の蓄積により子宮が破裂したりするリスクがあるなど、緊急性が高い病気です。大切な愛犬愛猫の命を危険に晒さないためにも、病気になる前に避妊手術を受ける選択を検討することをお勧めします。

犬や猫の避妊・去勢の重要性についての記事こちらから

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この記事を書いた人
永原 未悠(ながはら みゆ)
  • 永原動物病院 院長
  • 永原 未悠(ながはら みゆ)

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