
コラム
COLUMN
愛犬の痛みのサイン|獣医師が解説する頸部・椎間板ヘルニアの症状と対策
2025.06.26犬
愛犬が突然動けなくなったり、痛みで震えたりしている姿を見たことはありませんか?
「いつも元気に走り回っていたのに、急に歩きたがらなくなった」「抱き上げたら痛がって鳴いた」といった症状が見られると、飼い主様としてはとても心配になることでしょう。
犬がこうした痛みを感じる原因の一つに、頸部・椎間板ヘルニアがあります。特に小型犬や胴長短足の犬種(ダックスフンド、シーズー、ペキニーズなど)に多く見られる病気で、首や背中の神経が圧迫されることで、痛みや麻痺を引き起こします。
今回は犬の頸部・椎間板ヘルニアについて、症状や原因、治療法、さらに自宅でできる予防・再発防止策などを詳しく解説します。
■目次
1.頸部・椎間板ヘルニアとは?〜犬の背骨の構造と発症メカニズム〜
2.見逃せない!ヘルニアの主な症状と早期発見のポイント
3.診断方法
4.治療方法
5.ご自宅での環境づくりと日常ケア
6.サポート栄養素とサプリメントの活用
7.まとめ〜愛犬の健康を守るために〜
頸部・椎間板ヘルニアとは?〜犬の背骨の構造と発症メカニズム〜
犬の背骨は、「頸椎(首の部分)」「胸椎(背中の部分)」「腰椎(腰の部分)」の3つに分かれています。この背骨の間には「椎間板」というクッションの役割を果たす組織があり、関節の動きを滑らかにし、衝撃を和らげる働きをしています。
しかし、この椎間板が変性し、突出することで神経を圧迫すると、頸部・椎間板ヘルニアを発症します。
<頸部ヘルニア(首の部分で発生)>
前足の麻痺や首の痛みが現れます。
<椎間板ヘルニア(背中から腰で発生)>
後ろ足の麻痺や歩行困難が起こることがあります。
特に、ダックスフンドやシーズー、ペキニーズなどの胴長短足の犬種は、遺伝的に椎間板が弱く、発症しやすいとされています。さらに、加齢や肥満、過度な運動や高い場所からのジャンプも、椎間板に負担をかけ、ヘルニアを引き起こす要因となります。
見逃せない!ヘルニアの主な症状と早期発見のポイント
頸部・椎間板ヘルニアの症状は軽度から重度まで幅広く、段階によって異なります。以下のような症状が見られた場合は、早めに動物病院に相談しましょう。
・動きたがらない(じっとして動かなくなる)
・抱き上げたり、触ったりすると痛がる(鳴いたり、体をこわばらせたりする)
・震える(痛みによるストレス反応)
・後ろ足を引きずる(歩き方が不自然になる)
・首を動かさない(頸部ヘルニアの場合)
軽症の場合は、軽い痛みや震え程度で済むこともありますが、重症になると完全麻痺や歩行困難、排尿障害など深刻な状態に陥ることもあります。
また、骨折や関節炎などの疾患と症状が似ているため、自己判断せず、専門的な診断が必要です。
診断方法
頸部・椎間板ヘルニアの診断では、複数の検査を組み合わせることで、より正確な判断を行います。
<問診と視診>
飼い主様から症状がいつから現れたか、どのような状況で悪化するかなどを詳しく伺います。また、犬の歩き方や姿勢を観察し、異常がないかを確認します。
<触診・神経学的検査>
犬の首や背中を優しく触りながら、どの部分に痛みがあるかを調べます。また、足の反射や歩行の状態をチェックし、神経の異常がないかを確認します。
<レントゲン検査>
背骨の骨の並びや異常がないかを調べます。ただし、レントゲンでは椎間板自体の異常は写らないため、ヘルニアの可能性が高いかどうかを判断するための補助的な検査となります。
<MRI・CT検査(必要に応じて)>
椎間板の変性や神経の圧迫の程度を詳しく確認するために行います。ヘルニアの確定診断にはMRI検査が最も有効とされています。特に手術が必要なケースでは、事前に精密検査を行うことで、正確な治療計画を立てることができます。
治療方法
頸部・椎間板ヘルニアの治療は、症状の重症度によって選択肢が異なります。軽症であれば内科的治療で改善が見込めますが、重症の場合は外科手術が必要になります。
<内科的治療(軽症〜中等症の場合)>
比較的軽い症状(痛みのみ、歩行が可能)であれば、以下の治療を行います。
■安静(ケージレスト)
運動や激しい動きを制限し、ケージやサークル内での生活を数週間続けます。これにより、椎間板の炎症を抑え、回復を促します。安静期間中は、興奮させないように環境を整えることも大切です。
■抗炎症薬・鎮痛薬の投与
炎症を抑え、痛みを和らげるためにステロイド剤や非ステロイド性抗炎症薬を使用します。ただし、長期間の使用には副作用のリスクがあるため、獣医師の指導のもとで適切な管理が必要です。
■理学療法・リハビリ
症状が改善してきたら、マッサージや軽いストレッチを行うことで、筋肉の緊張をほぐし、再発予防に役立てることができます。必要に応じて動物用リハビリテーションを取り入れることもあります。
■体重管理
肥満は椎間板への負担を増やし、症状を悪化させる原因となります。適切な食事管理と運動制限を行い、理想的な体重を維持することが重要です。
<外科的治療(重症の場合)>
以下のような重度の症状が見られる場合は、手術が必要になります。
・強い痛みが長期間続く(内科治療で改善しない)
・後ろ足の麻痺が進行している
・排尿・排便のコントロールができなくなった
■手術の目的と方法
手術では、原因となっている飛び出した椎間板の一部を取り除き、神経の圧迫を解消します。これにより、痛みの緩和や歩行機能の回復が期待できます。
■術後のケア
手術後は、リハビリや安静管理が非常に重要です。術後の回復には数週間〜数ヶ月かかることもあり、定期的な通院やリハビリが必要となります。
永原動物病院では犬の状態に応じた最適な治療プランを提案し、術後のケアまでしっかりサポートいたします。
ご自宅での環境づくりと日常ケア
ヘルニアの予防や再発防止には、以下の日常での環境づくりが重要です。
・滑りにくい床材(フローリングにカーペットやマットを敷く)
・階段・高い場所へのアクセス制限(スロープを活用)
・首輪よりもハーネスを使用(首への負担を軽減)
・適切な体重管理(肥満はヘルニアのリスクを高める)
永原動物病院では頸部・椎間板ヘルニアの診療だけでなく、日常ケアに関する具体的なアドバイスも行っています。「うちの犬の生活環境を改善したい」「体重管理がうまくいかない」「適切な運動量がわからない」などのお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
サポート栄養素とサプリメントの活用
ヘルニアの回復・予防には、以下の栄養素が有効とされています。
・グルコサミン・コンドロイチン(関節の健康をサポート)
・オメガ3脂肪酸(炎症を抑える効果)
ただし、サプリメントはあくまで補助的なものです。適切な治療と併用し、獣医師に相談のうえで使用しましょう。
まとめ〜愛犬の健康を守るために〜
頸部・椎間板ヘルニアは、早期発見・早期治療が鍵です。「動かない」「震える」「後ろ足を引きずる」といった症状が見られたら、すぐに岡山市・岡山市南区の永原動物病院へご相談ください。
また、適切な治療と日常のケアで、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。大切な愛犬が痛みのない快適な生活を送れるよう、全力でサポートいたします。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
当院の診療案内はこちらから
初めての方はこちらから
お電話でのお問い合わせはこちら:086-262-1837
この記事を書いた人

- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。
- 土曜のみ9:00~13:00の診療
- 水曜と土曜の午後・日曜・祝日・GW・お盆・年始年末
- 各種お支払い可能
- 現金/Paypay/各種クレジット
-