コラム
COLUMN
犬や猫の咳は様子見で大丈夫?考えられる病気と危険なサインを獣医師が解説
2026.07.30犬・猫
「最近、愛犬がケホケホと咳をするようになった」
「ガーガーという苦しそうな音が気になる」
「愛猫が毛玉を吐くようなしぐさを繰り返している」
このような様子を見て、不安を感じている飼い主様もいらっしゃるかと思います。
一方で、咳は犬や猫で比較的よく見られる症状でもあるため「元気も食欲もあるし、少し様子を見てもいいのかな」と迷われる方も多いでしょう。
しかし、犬や猫の咳には、気管への軽い刺激によるものだけでなく、肺炎や肺水腫、心臓病など、早めの治療が必要な病気も隠れている場合があります。
そこで今回は、犬や猫の咳の種類や主な原因、受診を急いだほうがよい危険なサインについて解説します。

■目次
1.犬や猫の咳にはどんな種類がある?まずは咳の特徴を知ろう
2.犬や猫の咳で考えられる主な病気
3.こんな咳は急いで受診を|緊急性が高いサインとは
4.咳の原因はどう調べる?動物病院で行う検査
5.おうちで見ておきたいポイント|受診前に確認しておくと安心
6.まとめ
犬や猫の咳にはどんな種類がある?まずは咳の特徴を知ろう
咳は音や出方、表れるタイミングによって、原因を推測する手がかりになる場合があります。
例えば、以下のような違いがあります。
◆「ケホケホ」と乾いた咳
気管や気管支の炎症、感染症などで見られることがあります。
◆「ガーガー」とアヒルの鳴き声のような咳
小型犬に多い気管虚脱でよく見られる特徴です。
◆「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音を伴う咳
気管支や肺に異常がある場合や、猫喘息などで見られることがあります。
◆発作のように何度も続く咳
気管の病気だけでなく、心臓病や肺の病気が関係している場合もあります。
また、咳とえずきは見分けがつきにくいことがあります。
「吐きそうだけれど何も出ない」「毛玉を吐こうとしているように見える(猫の場合)」と感じても、実際には咳であるケースも少なくありません。
さらに、咳が出るタイミングも重要です。
興奮したとき、散歩や運動のあと、夜間、朝方、季節の変わり目など「いつ咳が出るのか」を確認しておくと診断の参考になります。
なお、診察時には実際の咳を確認できないこともあります。そのため、ご自宅では、無理のない範囲で動画を撮影しておくと、診断に役立つ場合があります。
犬や猫の咳で考えられる主な病気
咳の原因はひとつではありません。年齢や犬種・猫種によっても起こりやすい病気は異なります。
<ケンネルコフ>
ケンネルコフは、犬によく見られる呼吸器感染症です。
乾いた咳が続くことが多く「風邪をひいただけかな」と思われることもあります。しかし、症状が長引いたり、ほかの感染症を併発したりする場合もあるため注意が必要です。
<気管虚脱>
気管虚脱は、小型犬によく見られる病気です。
特徴的なのは、前述したように「ガーガー」とアヒルの鳴き声のような咳です。興奮したときや運動後、暑い日などに悪化しやすい傾向があります。
<猫喘息・慢性気管支炎>
猫では、喘息や慢性気管支炎が咳の原因になることがあります。
低い姿勢になって苦しそうに咳をしたり、毛玉を吐こうとしているように見えたりするため、見逃されることも少なくありません。
咳が繰り返し表れる場合は、動物病院で詳しく状態を確認することが大切です。
<肺炎・肺水腫・心臓病>
咳があるからといって、必ずしも呼吸器だけの病気とは限りません。
肺炎は、細菌やウイルスなどによって肺に炎症が起こる病気です。咳に加えて、発熱や元気・食欲の低下、呼吸が速くなるなどの症状が表れることがあり、重症化すると呼吸が苦しくなる場合もあります。
一方、心臓病が進行すると、肺に水がたまる肺水腫を引き起こすことがあります。肺水腫では咳だけでなく、呼吸困難が表れ、命に関わる場合もあるため早急な対応が必要です。
このように、咳の原因は呼吸器だけでなく心臓の病気である場合もあります。咳止めだけでは改善しない病気もあるため、原因に応じた治療が大切です。
こんな咳は急いで受診を|緊急性が高いサインとは
咳が見られても、元気や食欲があり、しばらくすると治まるケースもあります。
しかし、以下のような症状が見られる場合は、早めの受診をおすすめします。
<特に注意したい症状>
・呼吸がいつもより速い
・苦しそうに呼吸している
・横になるのを嫌がる
・舌や歯茎が紫色っぽく見える
・元気がなく、ぐったりしている
これらは肺や心臓などに大きな負担がかかっているサインである可能性があります。
<猫の「開口呼吸」は緊急サイン>
猫が犬のように口を開けたまま呼吸している場合は、非常に危険な状態の可能性があります。
肺炎や肺水腫、重度の猫喘息などが関係しているケースもあり、一刻も早い対応が必要になることがあります。
「少し休めば落ち着くだろう」と様子を見るのではなく、できるだけ早く動物病院へ連絡してください。
<様子見でもよい咳との違い>
一時的に数回だけ咳をした場合は、大きな異常ではないケースもあります。
しかし、咳の回数が増えてきた、何日も続いている、以前より苦しそうになってきたという場合は注意が必要です。
また、元気や食欲があるからといって、病気がないとは言い切れません。気になる変化が続く場合は、早めに相談することをおすすめします。
咳の原因はどう調べる?動物病院で行う検査
咳の原因は気管・肺・心臓など幅広いため、見た目だけで判断することは困難です。
そのため、まずは咳の様子や生活環境などを詳しくお伺いしたうえで、必要に応じて以下のような検査を組み合わせます。
・聴診
・レントゲン検査
・超音波検査
・血液検査
呼吸状態によっては、検査よりも先に酸素管理を優先することもあります。
なお、当院では検査結果だけでなく、飼い主様が感じている不安やご家庭での日頃の様子も診断に役立つ大切な情報と考えています。
現在の状態や考えられる病気、今後の治療方針について丁寧にご説明し、インフォームドコンセントを大切にしながら、その子に合った治療を飼い主様と一緒に考えていきます。
また、セカンドオピニオンとしてご相談いただくことも可能ですので、診断や治療について不安がある場合もお気軽にご相談ください。
おうちで見ておきたいポイント|受診前に確認しておくと安心
受診前に以下のような内容を確認しておくと、診断の参考になります。
・いつから咳が表れているか
・どのような音の咳か
・どんなタイミングで出るか
・呼吸が苦しそうではないか
・食欲や元気に変化はないか
また、普段から健康診断を受けておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。
さらに、肥満は呼吸器や心臓への負担を大きくする場合があるため、適切な体重管理や食事管理も大切です。
「まだ大丈夫だろう」と判断するのではなく「少し気になる」という段階で動物病院に相談することが、病気の早期発見につながることもあります。
まとめ
犬や猫の咳には、気管の軽い炎症から肺炎、肺水腫、心臓病まで、さまざまな原因があります。症状だけで原因を判断することは難しく、気管虚脱だと思っていたら心臓病だった、毛玉を吐こうとしていると思ったら猫喘息だったというケースもあります。
特に、呼吸が苦しそうな場合や、ぐったりしている場合、猫が口を開けて呼吸している場合は緊急性が高い可能性もあるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。
当院では、飼い主様との信頼関係を大切にしながら、不安や疑問に寄り添った診療を心がけています。咳が続いていて気になる場合や「受診したほうがよいのか迷っている」という場合も、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。