コラム
COLUMN
犬の甲状腺機能低下症|毛が薄い・元気がない・太りやすいときは?
2026.09.15犬
「以前より毛が薄くなった気がする」
「寝ている時間が増え、元気がない」
「食事量は変わらないのに太りやすくなった」
こうした変化は、年齢や運動不足によるものと思われがちです。しかし、複数の変化が重なっている場合は、犬の甲状腺機能低下症が隠れている可能性があります。
甲状腺機能低下症は症状がゆっくりと進むため、飼い主様が明らかな異常に気づく前に、ほかの症状で受診した際や健康診断の血液検査をきっかけに見つかることも少なくありません。
今回は、犬の甲状腺機能低下症について、気づきやすい症状や検査、治療、定期的な状態確認が必要な理由を解説します。

■目次
1.犬の甲状腺機能低下症とは?
2.症状
3.健康診断やほかの病気の検査で見つかることも
4.治療は不足しているホルモンを薬で補う
5.薬を飲み続けるだけでなく定期チェックが必要
6.まとめ
犬の甲状腺機能低下症とは?
甲状腺は、首の付近にある小さな器官です。甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」には、体の代謝や体温、心臓の働き、皮膚や被毛の状態などを調整する役割があります。
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量が不足し、全身の代謝が低下する病気です。主に中高齢の犬でみられ、甲状腺の組織が免疫反応によって壊されたり、萎縮したりすることが原因と考えられています。
なお、甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症」は、犬よりも高齢の猫で多くみられます。
症状
甲状腺機能低下症では、代謝の低下によって体のさまざまな場所に変化が表れます。比較的気づきやすい症状は、以下のとおりです。
・左右対称に毛が薄くなる
・しっぽの毛が薄くなる
・皮膚が乾燥してフケが増える
・皮膚が黒ずむ
・皮膚炎や膿皮症を繰り返す
・元気がなく、寝ている時間が増える
・散歩に行きたがらない
・食事量が増えていないのに太りやすくなる
・寒がるようになる
・動きや反応が鈍くなる
こうした変化は少しずつ表れるため「年齢のせいだろう」と見過ごされることもあります。
特に、毛の変化と元気の低下、体重の増加が重なっている場合は、一度動物病院にご相談ください。
健康診断やほかの病気の検査で見つかることも
当院では、皮膚病や体重増加など、別の理由で来院した犬の検査を進めるなかで、甲状腺機能低下症が疑われることもあります。
診断では、まず問診や身体検査を行い、体重、皮膚や被毛の状態、心拍数などを確認します。一般的な血液検査では、コレステロールや中性脂肪の上昇、軽度の貧血などがみられることがあります。
さらに、甲状腺ホルモンの状態を確認するため、必要に応じて以下の項目を調べます。
・総サイロキシン(T4)
・遊離サイロキシン(FT4)
・甲状腺刺激ホルモン(TSH)
ただし、ほかの病気や使用している薬の影響によって、甲状腺ホルモンの数値が一時的に低くなることもあります。そのため、ひとつの検査値だけで判断せず、症状やほかの血液検査の結果、服薬状況などを総合的に確認することが大切です。
クッシング症候群など、似た皮膚症状や体重の変化が表れる病気との区別が必要になる場合もあります。
治療は不足しているホルモンを薬で補う
甲状腺機能低下症では、不足している甲状腺ホルモンを内服薬で補います。低下した甲状腺の機能そのものを元に戻すことは難しいため、多くの場合は長期にわたり投薬を続ける必要があります。
治療を始めると、元気や活動性に変化が表れることがあります。また、皮膚や被毛の状態が整うまでには時間がかかる場合があります。
治療への反応や変化が表れる時期には個体差があるため、すぐに毛が生えそろわなくても、自己判断で薬をやめたり量を変えたりしないようにしましょう。
また、薬の吸収や必要量には個体差があります。ほかの薬や食事が影響する可能性もあるため、薬を与える時間や方法は獣医師の指示に従い、できるだけ一定にすることが大切です。
薬を飲み続けるだけでなく定期チェックが必要
甲状腺機能低下症は「一度薬の量が決まれば、そのまま飲み続ければよい」という病気ではありません。犬の体重や年齢、体調、ほかの病気の有無によって、適切な投薬量が変わることがあるためです。
薬の量が不足していると、元気の低下や体重増加、皮膚症状などが十分に改善しない可能性があります。一方で、量が多すぎると、落ち着きがなくなる、呼吸が速くなる、水を飲む量が増える、体重が減るといった変化が表れることがあります。
そのため、治療開始後や薬の量を変更した後は、血液検査で甲状腺ホルモンの値を確認します。状態が落ち着いた後も、定期的に以下の点を確認していきます。
・現在の薬の量が体に合っているか
・症状や体重に変化がないか
・肝臓や腎臓などに異常がないか
・ほかの病気を発症していないか
検査の時期や採血する時間は、服薬状況や犬の状態によって異なります。当院では、検査結果とご家庭での様子を照らし合わせながら、その時々の状態に合った治療を検討します。
まとめ
犬の甲状腺機能低下症では、毛が薄い、元気がない、太りやすいといった、年齢による変化と区別しにくい症状が表れます。はっきりとした不調がなく、健康診断やほかの症状の検査をきっかけに見つかることもあります。
治療では長期的な投薬が必要になることが多いものの、ただ薬を飲み続けるだけではなく、定期的な診察や血液検査によって薬の量と全身状態を確認することが重要です。
「最近、毛が薄くなった」「以前より動きたがらない」「食事量は変わらないのに体重が増えた」など気になる変化がございましたら、年齢のせいと決めつけず、お早めに動物病院へご相談ください。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。