コラム
COLUMN
犬や猫のお腹が膨らんでいる?考えられる病気と受診の目安
2026.09.15犬・猫
「いつもよりお腹が膨らんで見える」「触ると張っている気がする」と感じると、食べすぎなのか、病気によるものなのか判断に迷う飼い主様もいらっしゃるかと思います。
犬や猫のお腹が膨らむ状態は「腹部膨満」と呼ばれます。食事や肥満によって目立つこともありますが、胃腸にガスが溜まっている、腹水が増えている、臓器が腫れているなど病気が関係している場合もあります。
なかには短時間で状態が悪化する病気もあるため、お腹の見た目だけでなく、膨らみ方やほかの症状をあわせて確認することが大切です。
今回は、犬や猫のお腹が膨らむ主な原因や、早めに受診したい症状、緊急性の高いサインについて解説します。

■目次
1.犬や猫のお腹が膨らむ主な原因
2.お腹の膨らみから考えられる病気
3.すぐに受診したい緊急性の高いサイン
4.緊急症状がなくても早めに相談したいケース
5.動物病院で行う検査と治療
6.まとめ
犬や猫のお腹が膨らむ主な原因
お腹が膨らんで見える原因は、大きく分けると次のようなものがあります。
<食事・肥満・妊娠>
食事を多く食べた直後や、体脂肪が増えた場合には、お腹が丸く見えることがあります。また、避妊手術を受けていない犬や猫では、妊娠によって徐々にお腹が大きくなることもあります。
ただし、体重は増えていないのにお腹だけが膨らんできた場合や、急に張りが強くなった場合は、食べすぎや肥満と決めつけず、病気の可能性も考える必要があります。
<胃腸にガスや内容物が溜まっている>
消化不良や便秘、腸閉塞、胃拡張(胃捻転)などによって、胃腸にガスや食べ物、便が溜まると、お腹が膨らむことがあります。嘔吐や食欲低下、排便がない、何度もいきむといった症状があれば注意が必要です。
<腹水が溜まっている>
腹水とは、お腹の中に液体が異常に溜まった状態です。心臓病や肝臓病、血液中のたんぱく質が減少する病気、腫瘍、腹腔内の炎症などさまざまな原因で生じます。
腹水が増えると、お腹全体が左右に広がるように膨らむことがあります。また、体重が増えている一方で、背中や腰回りの筋肉が落ちている場合もあります。
お腹の膨らみから考えられる病気
腹部膨満を引き起こす病気は、消化器だけに限りません。症状の経過や犬や猫の年齢、性別などによって考えられる病気が異なります。
<胃拡張・胃拡張胃捻転症候群>
胃の中にガスや食べ物が急速に溜まり、胃が大きく膨らんだ状態です。特に犬では、拡張した胃がねじれる「胃拡張胃捻転症候群」を起こすことがあります。
お腹の張りに加えて、吐こうとしているのに何も出ない、よだれが多い、落ち着かず動き回る、呼吸が速いなどの症状が表れます。命に関わる可能性があるため、疑われる場合はすぐに動物病院へ連絡してください。
<腸閉塞>
異物や腫瘍などによって腸の内容物が通過できなくなる病気です。嘔吐や食欲低下、腹痛、排便量の減少などがみられ、進行すると腸の壊死や腹膜炎につながる場合があります。
飲み込んだ異物の位置によっては、内視鏡で取り出せることもあります。
<子宮蓄膿症>
避妊手術を受けていないメスの犬や猫では、子宮内に膿が溜まる子宮蓄膿症によってお腹が膨らむことがあります。元気や食欲の低下、多飲多尿、嘔吐、陰部からの分泌物などが主な症状です。
ただし、膿が体外へ出ないタイプでは分泌物がみられないため、発見が遅れることがあります。
<腫瘍や臓器の腫れ>
肝臓や脾臓などの臓器が腫れたり、お腹の中に腫瘍ができたりすると、腹部が膨らむことがあります。腫瘍から出血すると、お腹の中に血液が溜まり、急にお腹が大きくなる場合もあります。
慢性的な体重減少や食欲低下、元気がないなどほかの変化を伴っていないかも確認しましょう。
すぐに受診したい緊急性の高いサイン
お腹の膨らみとともに次のような症状がみられる場合は、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。
・短時間でお腹が急に膨らんだ
・吐こうとしているのに何も出ない
・お腹を触ると強く嫌がる
・前足を伸ばして胸を床につけ、お尻を上げるような姿勢を取る
・呼吸が速い、苦しそうにしている
・歯ぐきが白っぽい
・ぐったりしている、立てない、意識がもうろうとしている
・何度も排尿姿勢を取るのに尿が出ない
これらの症状がある場合は、様子を見ず、速やかに動物病院を受診してください。特に、尿が出ない状態や胃拡張胃捻転症候群、腹腔内出血などでは、早急な処置が必要になることがあります。
緊急症状がなくても早めに相談したいケース
急激な変化がなく、元気や食欲が保たれていても、次のような場合は早めの受診をご検討ください。
・数日から数週間かけてお腹が大きくなっている
・体重は減っているのに、お腹だけが膨らんでいる
・食欲や飲水量、排便・排尿の状態が変化した
・嘔吐や下痢を繰り返している
・避妊手術を受けていないメスで、発情後に体調が変化した
・咳や疲れやすさがみられる
腹部膨満は、見た目だけでは原因を判断できません。痛がっていない場合でも、腹水や臓器の腫れが徐々に進んでいる可能性があります。
受診までに、お腹の膨らみに気づいた時期や食欲、嘔吐、排便・排尿の様子を記録しておくと診察時の参考になります。横と上から写真を撮り、変化が分かるようにしておくのもよいでしょう。
動物病院で行う検査と治療
動物病院では、まずお腹の膨らみ方や硬さ、痛みの有無を確認します。そのうえで、症状に応じて血液検査、レントゲン検査、超音波検査、尿検査などを組み合わせます。
腹水が認められる場合には、液体を採取して性状や細胞を調べることもあります。また、腫瘍や臓器の異常が疑われるときには、細胞診などの追加検査を検討します。
治療方法は原因によって異なり、点滴や内服治療のほか、胃腸内のガスを抜く処置、異物の摘出、外科手術などが必要になる場合もあります。
当院では、細かな問診と検査結果をもとに原因を整理し、飼い主様と相談しながら治療方針を検討しています。お腹の膨らみ方や全身状態を確認し、それぞれの犬や猫に必要な検査や対応をご提案します。
まとめ
犬や猫のお腹が膨らむ原因には、食事や肥満だけでなく、胃腸へのガスの貯留、便秘、腹水、子宮蓄膿症、腫瘍などさまざまな病気があります。
特に、お腹が急に膨らんだ、吐こうとしても吐けない、呼吸が苦しそう、ぐったりしているといった場合は、緊急性の高い状態が疑われます。お腹を強く押したり、自宅にある薬を自己判断で与えたりせず、速やかに動物病院へご連絡ください。
また、少しずつ膨らんでいる場合でも、見た目だけで病気の有無を判断することは困難です。「以前と体型が違う気がする」という段階でも構いませんので、気になる変化がございましたら、動物病院へお早めにご相談ください。
岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
永原動物病院
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この記事を書いた人
- 永原動物病院 院長
- 永原 未悠(ながはら みゆ)
飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。