犬・猫の膵炎とは?嘔吐や腹痛など注意すべき初期症状と予防法を解説

2026.07.22犬・猫

「最近、愛犬や愛猫が何度も吐いている」「元気がなく、ご飯も食べたがらない」などの様子が見られると、不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。

こうした症状の背景にはさまざまな病気が考えられますが、そのひとつに「膵炎」があります。膵炎は膵臓に炎症が起こる病気で、重症化すると命に関わることもあります。

膵炎の原因はさまざまで、高脂肪の食事や誤食が関係する場合もあれば、肥満やホルモン疾患、基礎疾患、体質などが関与することもあります。

そのため、特定の原因だけにとらわれず、日頃から体重管理や基礎疾患の治療、食事管理などを含めた総合的な健康管理を行うことが大切です。

そこで今回は、犬と猫の膵炎について、原因や症状、検査・治療の流れ、ご家庭でできる予防のポイントなどについて解説します。

■目次
1.膵炎とは?
2.こんな症状に注意|膵炎のサインとは
3.膵炎の原因
4.膵炎の診断と治療
5.ご家庭でできる膵炎予防のポイント
6.まとめ

膵炎とは?

膵臓はお腹の奥深くにある臓器で、大きく分けて二つの重要な働きをしています。
一つ目は、フードに含まれる脂肪やタンパク質を分解するための「消化酵素」をつくること。二つ目は、血糖値を調整するインスリンなどの「ホルモン」を分泌することです。

膵炎とは、この膵臓に炎症が起きている状態を指します。本来は腸の中で働くはずの消化酵素が、膵臓の中や周囲で異常に活性化してしまい、自分自身の組織を傷つけてしまうようなイメージの病気です。

こんな症状に注意|膵炎のサインとは

膵炎でよく見られる症状はいくつかありますが、最初は「ちょっとお腹を壊しただけかな?」と見過ごされてしまうことも少なくありません。まずは、次のような様子がないかをチェックしてみてください。

<よく見られる症状>

・何度も吐く(食後すぐ吐く、胃液だけを吐くなど)
・ご飯を食べたがらない(大好きなおやつにも反応が薄い)
・元気がない・ぐったりしている
・お腹を痛がる(お腹を触ると嫌がる/背中を丸めてじっとしている)
・震える・落ち着かない

同じ膵炎でも、犬と猫では症状の出方に少し違いがあります。

<犬の場合>

犬では、繰り返す嘔吐や急にぐったりする様子が目立つことが多く「お腹を丸めて痛そうにしている」「突然ご飯を食べなくなった」など、比較的わかりやすい変化で気づかれることがよくあります。

<猫の場合>

一方で猫は、症状がそれほど目立たないことも多く「なんとなく食欲が落ちてきた」「動きが少なくなり、じっとしている時間が増えた」といった“ささいな変化”が中心になる傾向があります。はっきりした症状が出ないぶん、「様子を見ているうちに悪化していた」というケースも少なくありません。

以下のようなときは、なるべく早く動物病院にご相談ください。

・嘔吐や食欲不振が1日以上続いている
・急に元気がなくなり、動きたがらない
・お腹を痛がって鳴く、じっと丸くなって動かない
・ぐったりしていて立ち上がるのもつらそう

膵炎は、早めに気づいて対処できるかどうかで、その後の経過が大きく変わることもある病気です。少しでも「いつもと違う」と感じたときは、早めの受診を検討していただければ安心です。

膵炎の原因

膵炎の原因はひとつではなく、以下のようにさまざまな要因が関与していると考えられています。

<高脂肪の食事>

以下のような脂肪分の多い食事や誤食は、膵炎の発症や悪化のきっかけになることがあります。

・脂身の多い肉(牛・豚の脂身、ベーコン、ソーセージなど)
・揚げ物(唐揚げ、フライドポテト、コロッケなど)
・バターや生クリーム、チーズをたっぷり使った料理やデザート
・ケーキ、ホイップクリーム、アイスクリームなどの乳脂肪の多いスイーツ

<誤食>

特に鳥の骨(特に加熱された鶏の骨)は、消化されにくく鋭く割れやすいため、誤食すると消化管を傷つけるだけでなく、膵炎の引き金になることもあります。魚の骨も同様に注意が必要です。「身だけをきれいに取ったつもりでも、小さな骨が残っていた」ということも珍しくありません。

<肥満や高脂血症>

肥満は膵炎のリスクを高める要因のひとつとされています。また、血液中の脂質が多い状態(高脂血症)も膵臓への負担につながることがあります。

<基礎疾患>

糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症などのホルモン疾患がある場合、膵炎を発症しやすくなることがあります。また、肝臓や胆道、消化器の病気が関与しているケースもあります。

<薬剤の影響や体質>

一部の薬剤が膵炎の発症に関与することがあります。また、ミニチュア・シュナウザーやコッカー・スパニエル、トイプードル、など一部の犬種では体質的に発症しやすい傾向があるとされています。ただし、どの犬種や猫種でも発症する可能性があります。

膵炎の診断と治療

膵炎が疑われる症状で来院された場合、まず問診から始めます。いつからどのような症状が出ているか、最近の食事内容やおやつの量、ごちそうを食べる機会はなかったか、などを詳しくうかがい、原因の可能性を整理していきます。

身体検査では、体温や心拍、脱水の状態を確認するとともに、お腹全体や膵臓のある周囲をそっと触って痛みの有無を確かめます。そのうえで、血液検査を行い、炎症の程度や膵臓に関係する項目、脱水や電解質のバランス、内臓の状態などを評価します。

必要に応じて、エコー(超音波)検査やX線検査も行います

症状の強い膵炎では、その日のうちに入院治療が必要になることも少なくありません。頻回の嘔吐や強い腹痛がある場合には、点滴による水分・電解質の補正や、吐き気止め、痛み止め、必要に応じて抗炎症薬や抗菌薬を使用しながら、全身状態を安定させていきます。膵臓を休ませるため、一時的に食事を控える(絶食)ことが必要になる場合もあります。

当院では、内視鏡を用いた検査や処置にも対応しています。膵炎と同時に胃腸の異物が疑われる場合には、内視鏡を使って胃の中を直接観察し、異物を取り出すことで、開腹手術を行わずに済むケースもあります。また、胃腸粘膜の状態を観察し、必要に応じて組織の一部を採取して詳しく調べることも可能です。

内視鏡についてより詳しく知りたい方はこちら

ご家庭でできる膵炎予防のポイント

膵炎はさまざまな要因が関係して発症するため、すべてを防ぐことは難しい病気です。しかし、以下のような対策を行うことでリスクを下げられる場合があります。

<「人の食べ物はあげない」を家族の共通ルールに>

まず「人の食べ物は基本的に与えない」というルールを、ご家族全員で共有しておきましょう。

特にイベントの日ほど「今日くらいはいいかな」と気持ちが緩みがちです。そんなときこそ「犬・猫には、いつものフード」「おやつは、あらかじめ決めた種類と量だけ」と決めておくと安心です。

<テーブル・床・キッチン周りの「拾い食い対策」>

テーブルの上や床に食べ物を放置しないことも、予防になります。

食べこぼしは、気づいたらすぐに片付ける
流し台やキッチンカウンターに、食べ物を置きっぱなしにしない

こうした少しの工夫が、拾い食いや誤食のリスクをぐっと減らしてくれます。

<ゴミ箱・ゴミ袋の置き場所を見直す>

骨や脂身、ソースのついた包装紙などが入ったゴミ袋は、犬や猫にとってとても魅力的な匂いがします。

蓋付きのゴミ箱を使う
できるだけ届かない場所に置く
ゴミ袋を床に直接置きっぱなしにしない

このような点を意識していただくだけでも、誤食の予防につながります。

<適正体重とフード選びも大切な予防>

適正体重を保つことも、膵炎予防の大切なポイントです。肥満は膵炎だけでなく、さまざまな病気のリスクを高めます。

肥満対策についてより詳しく知りたい方はこちら

当院では、体格や年齢、持病などを踏まえ、それぞれの子に合ったフード選びや、処方食のご提案も行っています。「どのフードをあげたらいいかわからない」「おやつはどこまでなら許容範囲か知りたい」といったご相談も、どうぞ遠慮なくお聞かせください。

まとめ

犬や猫の膵炎は、重症化すると命に関わることもある病気です。原因は食事だけではなく、肥満や基礎疾患、体質などさまざまな要因が関与していると考えられており、明確な原因が特定できない場合もあります。

一方で、高脂肪の食事や誤食は膵炎の発症や悪化のきっかけになることがあるため、日頃の食事管理や誤食対策は大切です。

また、適正体重の維持や基礎疾患の管理も、膵臓への負担を減らすうえで重要なポイントです。

嘔吐や食欲不振、元気消失などの症状が見られた場合は、自己判断せず早めに動物病院へご相談ください。

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岡山県岡山市を中心に地域のホームドクターとして診療を行う
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この記事を書いた人
永原 未悠(ながはら みゆ)
  • 永原動物病院 院長
  • 永原 未悠(ながはら みゆ)

飼い主様へのインフォームドコンセントや、信頼関係を大切にしています。大事な予防も含め、疾患(病気)への治療や方針について話し合い、飼い主様と一緒に進めてまいりたいと思います。

岡山市南区の動物病院 永原動物病院 Nagahara Animal Hospital
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